親が年齢とともにむせやすくなっている。どんなものを作ればいいか分からず、困っていませんか。
介護食と言って、噛む力や飲み込む力が弱くなった人向けのレシピがありますよ。
人類が初めて経験する高齢化社会。個人差はありますが、年齢とともに足腰だけでなく、食べる力が衰えるのは仕方のないことです。
食べることができなくなると、家族としては心配ですよね。しかし、家族としても初めてのことで分からないことだらけでしょう。
この記事では、病院や介護施設で管理栄養士として働く私が、介護食とは、介護食で避けたほうがよい食材、家族と一緒に食べる簡単レシピを紹介します。
大切なお父さん、お母さんのためにぜひ、最後まで読んで下さいね。
介護食のレシピは食べる人に合わせて考える
家族で食事をしていて、最近親がよくむせていて心配していませんか。
そんな時は、少しずつ介護食へ移行させていくといいですよ。
ご家族の状態はどんな感じですか?
介護食には、咀嚼・嚥下機能に合わせて段階があり、食べる人の状態に合わせた食事形態の料理を作る必要があります。
私が働く特養にショートステイの新規利用の連絡が入り、ご本人様の食事形態を確認すると、驚くことがあります。
入院やショートステイ利用中は、極刻みやソフト食なのに、家に帰ると家族と同じ普通形態で食べている人が時々いらっしゃるのです。
高齢者にとって食事で大切なことは、美味しいこと以上に安全であることなのです。
まずは、ご家族など介護食の対象となる人はどう状態であるか、下記の表のどこにあてはまるかを確認してください。
刻み食 | 歯が弱った人向け |
極刻み食 | 歯が弱い+飲み込みにくい |
ソフト食 | ↓ |
ミキサー食 | 飲み込みにくい人向け |
ゼリー食 | ↓ |
刻み食
一口大くらいの大きさに切ったものを刻み食と言います。歯が弱くなり、噛みにくくなった場合に適しています。
病院や施設で大きさの基準は違いますが、概ね上記のようなものです。
極刻み食
歯や歯茎が弱くなると、肉や魚などのたんぱく源は火が入ることで刻み食でも嚙み切りにくくなります。
飲み込むことができる場合は、極刻み食が適しています。
しかし、嚥下機能に障害がある場合は、刻んだ食材が口の中に広がり、余計にムセが見られることがありますので、注意が必要です。
ソフト食
歯が弱いことに加えて嚥下機能も低下した場合に適しています。
食材をミキサーにかけ、ゲル化剤を混ぜることでやわらかくて見た目も良い料理に仕上がります。
しかし、作るには慣れるのにコツが必要なことと、少し手間がかかります。
ミキサー食
歯がなくても食べることができます。ミキサーにかけて、とろみ剤で食べる人の嚥下能力に合わせたとろみの強さにします。
そうすることで、安全に食べて頂くことができます。
ゼリー食
ミキサー食でもむせる場合は、ゼリー食になります。
食材をミキサーにかけ、ゲル化剤や寒天を材料とするアガーなどで固めたものです。
食べる力に合わせる理由と注意点
食べる力に合わせた食事形態で提供しないと、嚥下機能障害がある場合は誤嚥性肺炎を繰り返すことがあり、注意が必要です。
しかし、施設の利用者がむせがひどくて、食事形態を落としたら、食べて頂けなくなることがありました。
調理師歴が長く、美味しい料理を作ってくれる調理師でも、慣れるまではソフト食がドロドロで、出来上がりが安定しないこともあります。
とろみ剤やゲル化剤を使って作るソフト食は慣れるまでは試行錯誤することになるかもしれません。。
したがって、食事形態を落とさなくてよいよう、日常生活で注意しなければならないことがあります。
それは、身体機能の維持です。
絶対ではありませんが、嚥下機能が低下する目安があります。
身体機能と嚥下機能は比例すると言われています。いつまでも普通の食事を口から食べ続けるために、歩けるからだづくりは大切ですね。
また、ソフト食、ミキサー食、ゼリー食にすることで栄養量が減って体重が減少することもあります。
その理由は、ソフト食の作り方を知れば、理解していただけるでしょう。
食事中にむせるのは、食事形態だけでなく、姿勢なども影響するので注意しましょうね。
介護食のレシピと高齢者が避けるべき食材
咀嚼・嚥下機能が低下した人にとって食べやすいもの、食べにくいものはどんなものかを解説しますね。
食べやすいものは、基本的にやわらかいものであることはお分かりいただけると思います。
ここでは、注意が必要な食材を紹介します。しかし、工夫次第で食べることができることもありますよ。
水分が少なくパサパサしたもの
パン、ふかし芋、ゆで卵などのパサパサしたものは、唾液の少ない高齢者にはむせやすい食材です。
パンはパン粥にしたり、ゆで卵はマヨネーズやドレッシングをかけましょう。
ふかし芋は、食べる前に飲み物で口の中を湿らせましょう。
以前、施設でひどくむせた利用者がいまし。一口食べたら、一口水分を飲むようにしましょう。
高齢者はふかし芋が好きなので、がっついて食べていました...見守りを怠らないように、または小さく切って提供しましょう。
噛むと口の中でバラバラになるもの
ピラフ、ひき肉、野菜のみじん切りなどは、口の中でバラバラになり、むせやすいです。
とろみあんをかけて食べましょう。また、野菜はみじん切りは嚥下機能に問題のない人だけにしましょう。
嚥下機能に障害がある人は避けたほうがいいでしょう。
ペラペラしたもの
わかめ、海苔などはのどを塞いでしまう可能性があり、危険です。
巻きずしは、食べる力に合わせて、切り目を入れたり、海苔は使わないなど工夫をしましょう。
弾力があるもの
かまぼこ、こんにゃく、こんにゃくゼリー、高野豆腐など弾力があるものは、意外とのどに詰めやすい食材です。
弾力があるので、嚥下力が低下していると送り込みができないのです。
酸味が強く酸っぱいもの
酢の物やレモンなどの柑橘類など、酸味が強いものはムセやすいです。
酸味を和らげる工夫をしてみましょう。
粉っぽいもの
きなこなど粉末状のものは、ムセやすいです。和菓子では、黒蜜などで湿らせて提供するとよいでしょう。
繊維が多く、硬いもの
ごぼう、れんこん、たけのこなどの硬いものは、繊維を切るように切り、薄く切るなど切り方にも工夫し、しっかり煮込みましょう。
いか、たこは控えましょう。しかし、たこ焼きに入れるたこは、フードプロセッサーで細かくすることで問題ない場合もあります。
ソフト食の利用者が普通形態を食べちゃった話
私が特養のデイサービスで経験したエピソードを紹介したいと思います。
介護食のレシピはおいしい!簡単!家族も一緒のものを
家族で介護食を必要とする人がいる場合、何をどう料理するのか分からないこともあるでしょう。
また、どのくらいの硬さが適切かもわからないと思います。まずは、レシピ通りに作ってみませんか。
家族と同じものなら食べられる
介護食のレシピは、嚥下力が低下した人だけが食べるものででしょうか。
もちろん、嚥下力の低下が著しい場合は、すべてミキサー食やゼリー食で同じメニューにできない場合もあるでしょう。
しかし、可能な限り、家族も同じものを食べられるレシピがあれば、別に作る手間も省けて一石二鳥ですね。
そんなレシピが1~2週間サイクルで使えるくらいの数があれば、献立を考えやすいかもしれませんね。
介護食レシピの紹介
ほうれん草のお浸し
<材料>(1人分)
- ほうれん草 50g
- しょうゆ 2g
- みりん 2g
- だし汁 10cc
- 片栗粉 2g
- 水 6cc
(作り方)
1 ほうれん草をやわらかめにゆで、3~5mmに小さく切る
2 調味料を合わせ、とろみをつけてからほうれん草にかける
鮭のムース
<材料>4食分
- 鮭 100g
- はんぺん 60g
- 豆腐 75g
(作り方)
1 鮭の骨を取り除き、焼く。
2 鮭、はんぺん、豆腐をフードプロセッサーに入れて攪拌する。
ふわふわハンバーグ
<材料>
- 豆腐 300g
- はんぺん 110g
- 玉ねぎ 100g
- 卵 1個(50g)
- 片栗粉 大さじ2
- おろし生姜 小さじ1
- めんつゆ 小さじ1
(作り方)
1 はんぺんを小さくちぎる
2 豆腐、はんぺん、炒めた玉ねぎ、卵、片栗粉を手で混ぜる
3 フライパンで焼く
4 めんつゆにおろし生姜を入れてタレを作る
市販の介護食を買って試してみるのもおすすめ
ソフト食を作ってみたいけど、そもそもどんなものかわからない、どのくらいのやわらかさなのか検討もつかないのではないでしょうか。
どのくらいの硬さが適切か、分からない場合は市販の介護食を試すことをお勧めします。
私が学生の頃に新聞で読んだ話です。
今から2〜30年前でも普通形態が食べにくく、薬局で売っているベビーフードを買って食べている高齢者がいるとのことでした。
赤ちゃん用で、買うのが恥ずかしいという声もあり、その頃から、高齢者用の食べやすい食事の開発が始まったと記憶しています。
今では、介護食はかなりのレパートリーもあり、色々試しながら、食べる人の好みやムセにくい料理などを見極めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
- 噛みにくい、飲み込みにくくなったら無理せず食事形態を変える
- のど詰めしやすい食材は個々人によって違う
- 食べる力に合わせて食事形態を柔軟に変える
- 介護食には刻み食、極刻み食、ソフト食、ミキサー食、ゼリー食がある
- 食事形態が大きく変わると、軟らかすぎたり見た目も変わり過ぎたりして食べてくれなくなることがある
- 食事形態が落ちるごとに栄養量も減少する
- 食事形態は簡単に変えず、できるだけ維持することを心がける
- 食事形態を維持するには、筋力維持が大切です
- 市販の介護食を試してみるのもおすすめです