介護食

誤嚥を防ぐ!高齢者の食事のポイントととろみ剤の使い方を管理栄養士が解説!

とろみ剤のとろみのつけ方に不安に思っていませんか。急いでいるのにとろみがつかないから多めに入れると、硬くなる...

それでは、とろみ剤について、この記事でしっかり学んでみて下さい。

私は、特別養護老人ホームで管理栄養士をしています。業務に追われてとろみ剤を多く入れ、硬すぎるお茶を提供する場面をよく見ました。

とろみ茶を飲んで頂けないのは、とろみが付き過ぎて、おいしくないからではないか。

これではいけない!ということで、実際に職員に「薄い」「普通」「濃い」の三段階に分けたとろみ茶を飲んでもらう勉強会を実施しました。

の後、職員は誤嚥リスクのある全員の利用者に「薄い」とろみ茶を提供し始めました。

誤嚥やむせ込みは、ご本人にとっては非常に辛い症状です。しかし、水分は人間にとっては必要不可欠なので、避けるわけにもいきません。

また、とろみ剤の使い方を理解するにはとろみ剤の物性を知ることも非常に大切です。

この記事では、とろみ茶の飲み比べはしていただけませんが、とろみ剤や誤嚥防止に関する情報を詰め込みました。

ぜひ最後まで読んでいただき、よりよい高齢者支援に役立てて頂けると幸いです。

誤嚥ってなに?

この記事にたどりついた人は、誤嚥がどういうものかはご存じだと思います。

上の図のように、食べ物を噛んで(咀嚼:そしゃく)、本来なら食道に入る食べ物が、気道へ入ることです。

私たちが食べ物を食べると、上の図の喉頭蓋が気道の「蓋(ふた)」となり、食べ物は無事に食道へと入っていきます。

しかし、高齢になると喉頭蓋が下りるタイミングが遅くなります。

特に、水分が気道や食道に落ちるスピードは速いため、とろみ剤を使って水分が落ちるスピードを遅くさせるのです。

誤嚥の危険性

誤嚥の怖さは、気道に入った食べ物が気道を塞いで窒息することです。

また、水分や唾液、食べ物が気管や肺に留まることで、誤嚥性肺炎を発症することがあります。

誤嚥性肺炎は、飲み込む力が低下しているため、治療して回復しても、再発しやすいので、注意が必要です。

誤嚥を起こした時の症状

誤嚥している症状で分かりやすいのは、ムセが見られることです。

しかし、必ずムセるわけではありません。誤嚥している時に見られる症状を理解し、早期発見することが大切です。

誤嚥しているときの症状

  1. むせ込み
  2. 声がかすれる
  3. 呼吸しにくそうにしている
  4. ぐったりしている
  5. 顔色が青白い

嚥下機能の低下した利用者がいつもと様子が違う場合は、誤嚥を疑ってみる必要があります。

食事の際、誤嚥予防のために注意すべきこと

誤嚥対策は、とろみ剤の使用や食事形態を合わせるだけではありません。

食事時でも、注意しなければならないことが多くあります。

食事は1日3回摂りますので、その都度注意が必要です。

食事時の姿勢

食事時の姿勢はとても重要です。姿勢の良しあしが、嚥下機能に影響を与えます。

体を支えることが難しくなった人には、クッションで支えてみて下さい。

左右に傾くことなく、あごも上がらないように注意しましょう。顎が上がると、誤嚥しやすくなります。

食事の食べ方

私たちが食事をするとき、意識していませんが、食べ物をよく噛んでドロドロにし、ひとまとめにして飲み込みます。

つぶつぶの状態で口の中に広がった状態では、嚥下機能に問題がなくても、むせてしまいます。

咀嚼・嚥下機能が低下していても、無理なく食事が食べられるように、食事を工夫することが大切です。

  1. 誤嚥しにくい食材を選ぶ
  2. とろみをつける
  3. 嚥下機能に合わせた食事形態で提供する
  4. ゆっくりよく噛んで食べる

口腔ケアの重要性

誤嚥性肺炎は、唾液や食べ物が気管や肺に入ることで発症します。嚥下機能が低下することが原因です。

口の中には多くの細菌がいます。食後、口腔ケアをしないと、食べ物の栄養を利用して細菌が増殖してしまいます。

口腔ケアを行うことで、細菌を減らしておくことが、誤嚥性肺炎の予防につながります。

誤嚥を防ぐとろみ剤の使い方と選び方

私が働いていた特養で、食器洗浄を手伝ったときのこと。コップの底に、とろみ剤が固まっている...

ちゃんと混ぜていないな。ということで、どのようにとろみをつけているか確認したら、大変なことが発覚。

まず、水分のついていないコップに、とろみ剤を入れます。次に、やかんでお茶を注ぐ。終了。

とろみ剤のパッケージには、イラスト付きで使い方を表示していましたが、その後、混ぜるという工程が記載されていない(汗)。

介護職員は、勢いよくお茶を注ぐことで、対流でとろみ剤が溶けると思っていたとのことです。

メーカーに問い合わせ、混ぜなくていいのか確認したところ、混ぜないといけないとのことでした(汗)。

この一件で、私はとろみ剤についてかなり勉強することになりました。

まずは自分でとろみ茶を飲んでみよう【とろみ剤の勉強会での職員の感想】

とろみ剤についていろいろ学び、介護職員にも生かしてほしくて実施した勉強会。

開催して本当によかったと思いました。少し強めのとろみをつけていた利用者も含め、全員薄いとろみに変更されました。

その理由は、自分が実際にとろみの強いとろみ茶を飲んで、いかにベタツキが強く、飲みにくいかが分かったからです。

家族や職場で試飲会などの実施もおすすめです。

とろみ剤の使い方【とろみ剤の物性を知ろう】

とろみ剤の使い方で、こんなことで困っていませんか。

  1. なかなかとろみがつかない
  2. ダマになる
  3. 味噌汁や牛乳、ジュースにとろみがつきにくい

それぞれの理由を解説しましょう。

  1. しっかり時間をかけて混ぜていますか。とろみ剤の粒子が水分を吸収することで、とろみがつきます。30秒以上混ぜると、お茶などはしっかりとろみがつきます。また、時間とともにとろみが強くなるので、規定量以上入れないようにしないと、硬くなりすぎることも
  2. お茶にとろみ剤を入れてすぐに混ぜていますか。水分が付着すると、粒子同士がくっついてしまい、ダマになります。一度くっつくと離れません。お茶を点てるように、小さな泡だて器を使って混ぜると、ダマになりにくいです(メーカーのアドバイスです)
  3. タンパク質を多く含むもの、酸味があるものは、とろみがつきにくいです。しかし、梅シロップで作ったジュースも、しっかり時間をかけて混ぜると、とろみ剤の量を増やさなくても、しっかりとろみがつきます。

味噌汁や牛乳など、高タンパク質用のとろみ剤も販売されています。しかし、非常に高価ですので、時間をかけてしっかり混ぜることで解決できます。忙しいですが、しっかり混ぜましょう。

とろみ剤の選び方

とろみ剤は、決して安いものではありません。施設では、経営面を考慮して一番安いとろみ剤を採用することも少なくありません。

しかし、実際にとろみ剤を使った食べ物、飲み物を摂取する人の身になって選ぶことが大切です。

私の職場で、お茶を飲みたがらない利用者がいましたが、それはとろみ剤の影響ではないかと考えます。

おいしく飲むことができるとろみ剤の選び方をマスターしましょう。

とろみ剤の選び方

  • お茶の味が変わらない
  • 透明感がある(濁らない)
  • ベタツキが少ない

最近は、とろみ剤の質が向上し、ひと昔に比べて少量で早くとろみがつく商品も出てきました。

今人気なのは、クリニコの「つるりんこ」ですね。ひと昔前は、ソフティアも人気でした。

ただ、お値段が高めなので、機能性とお値段のバランスでしょうか。

サンプルなどで試してみて、使う人にとってベストなとろみ剤をじっくり選んでみて下さい。

途中でとろみがゆるくなる場合

食事介助をしていると、途中でとろみがゆるくなってくることがあるかもしれません。

そんな時は、小さい小皿に少量ずつ介助してみましょう。

スプーンで介助すると、唾液の影響でとろみがゆるくなってくることがあります。

小分けすることで、最後まで適切なとろみ具合を維持できますよ。

まとめ

  • とろみ剤の選び方は味や色が変わらないものがよいでしょう
  • とろみ剤はとろみがつくのに30秒以上かかることを肝に銘じましょう
  • 時間の経過とともにとろみがつくので規定量以上入れるととろみが付き過ぎます
  • とろみ剤を使用するときは必ずしっかり混ぜましょう

いまだかつてない高齢化を実現した私たちですが、平均寿命60代の頃には分からなかったのが嚥下障害という問題。

また、経験しないと歳をとったらどんなに大変か想像すらつきません。

お一人おひとりの人生の週末まで、飲食は続きます。少しでも快適な食生活を提供できるように取り組んでいきたいですね。

-介護食
-, ,