介護食

噛むのが難しくなったら食べる介護食とは - 最後まで家で暮らしたいあなたへ

最近、食事を噛むことが難しくなってきたと感じていませんか。若い頃は意識することのなかった「食べる機能」は、年齢とともに衰えます。

それは仕方のないことではありますが、少しでも長く今までどおりの食事を続けたいですよね。

「食べる機能」の低下によって、あなたが食べる食事をソフト食・ミキサー食・ゼリー食へと変える必要がでてきます。

またこれらの食事形態は、作ることもそれなりに手間がかかります。

どんな食事をすればいいかわからないからと、きちんと食べなければ、「食べる機能」もどんどん低下します。

噛むことが難しい段階では、食材選びや調理法で食べやすくすることができるので、ぜひ挑戦してほしいです。

この記事では、特別養護老人ホームで管理栄養士として働く私が、介護食や「食べる機能」を維持するポイントについて解説します。

いつまでも元気で家で暮らしたいあなたは、是非、最後まで読んで下さいね。

介護食が必要になる理由

年齢とともに、足腰の筋力が衰えることは誰もが知っています。

しかし、「食べる機能」が低下するとは、誰も思いもしなかったのではないでしょうか。

私が大学を卒業し、管理栄養士として働き始めた約30年前が、介護食問題の始まりだったように思います。

私が当時勤務していた職場では、刻み食や極刻み食は全体の1割程度でした。

また、ミキサー食はとろみをつけずにミキサーにかけるのみで1人いるかいないか。ゼリー食なんて、同時はありませんでした。

それが、今では普通食・一口大が全体の2割で残りは刻みや極刻み、ミキサー食・ゼリー食とかなり嚥下機能の低下は進みました。

このような食事形態の移り変わりは、利用者の状況でみることができます。

全身の筋力と咀嚼力・嚥下力は比例する

噛む力・飲み込む力の低下の原因は、まず高齢化があります。

昔は、噛む・飲み込む力が衰える前に亡くなっていたため、介護食が必要なかったのです。

高齢になればなるほど、全身の筋力は低下します。全身の筋力は、噛む・飲み込む力と比例しているため、食べることが難しくなります。

身体機能の低下とともに食事形態も落とすことになる恐れが

デイサービス利用者は、週2〜3回、家から通って来られて、様々なレクリエーション、食事、入浴などをして1日過ごし、家に帰ります。

特養の利用者は、移動はなく、ご自身の部屋と食堂との移動と、週2回程度の入浴、たまにレクリエーションが行われるでしょうか。

ほとんど動くことがない生活では、筋力は当然ながら低下します。

歩くことができていた人が、歩けなくなって車いすで移動するようになり、1日のほとんどをベッドで過ごすことになります。

そのADLが低下するごとに、食事形態にも影響することがあります。

いつまでも元気で在宅で暮らしたいあなたは、自分でできることは自分でやる。

同居家族も、無理のない範囲で家事を助けてもらったり、運動習慣を作るなど工夫が必要です。

噛む力が弱くなった時の食事の工夫

噛む力が弱くなったら、まずは柔らかい食材を使うことです。そして、調理法にも工夫が必要です。

そして、なによりミキサーにかけたり固めたりせず調理が簡単なことが一番のメリットです。

若い頃に比べて食欲が低下したり、食べる量も減ったりするかもしれません。

しかし、この段階を維持できるようしっかり食べられるようにしましょう。

柔らかい食材の選び方

噛む力が弱い場合、硬いものを避けるだけで比較的食材の選び方は分かりやすいと思います。

また、個々人で食べにくい食材は違いますが、タンパク質は調理によって硬くなりやすいので注意しましょう。

適した食材

【タンパク質を多く含む食材】

  • 魚...刺身、火を通しても硬くならない(白身魚など)
  • 肉...脂が多めの部位(ヒレよりロースや豚バラ、胸肉よりもも肉など)
  • 野菜...玉ねぎ、大根、人参を中心に、水分を多く含む野菜は煮炊きすると柔らかくなりやすい

避けたい食材

  • 魚...火を通すと硬くなる(かつお、まぐろ)、いか、エビ、たこ、貝類
  • 肉...脂が少ない部位
  • 野菜...ごぼう、たけのこなど繊維が多いもの、生の葉野菜(レタスやキャベツの千切りなど口の中でばらつくもの)

調理方法の工夫

【水分が少なくパサつく食べ物】

これらの食材には、とろみをつけたり、マヨネーズやヨーグルトで和えることで、パサつきを抑えることができます。

また、焼き魚や肉のソテーなどは、焼くことで水分が飛ぶため、焼きびたしやソースを絡めることで、パサつきを抑えます。

【野菜の調理法】

  1. ほうれん草の胡麻和えなど、野菜は意外と残し勝ちです。噛みやすいように、少し茹で時間を長めにしてやわらかく茹でましょう
  2. 大根、人参などの根菜は、噛みやすい大きさに切りましょう
  3. ごぼうなどの硬い野菜は、隠し包丁を入れたり、やわらかく炊きます

【その他飲み込む力が少し低下していると感じるなら...】

  • ひき肉や野菜のみじん切りなどは、口の中でばらつくため、ムセやすいです
  • 粘り気やが強い餅や弾力のあるかまぼこやちくわは、つめやすいです
  • 酸味が強い酢の物は、ムセやすいので酸味を抑えましょう
  • うどんやそばなどすすり上げて食べる料理は、汁でムセやすいので、汁にとろみをつけましょう
  • 揚げ物は、表面が硬くなるので、ソースやだしなどを絡めてみましょう

おすすめの介護食レシピ

噛む力が弱い段階では、ちょっとの工夫で食べやすくなります。

食べる機能が失われることがないよう、しっかり噛んで口腔機能を鍛える工夫も必要です。

簡単に作れる柔らか食レシピ

かつとじ

とんかつだけでは、衣が硬くて噛みきれないこともあるでしょう。豚肉をたたいて繊維を切ったり、豚スライスを重ねてとんかつにします。

そして、卵でとじるととても食べやすくなります。

豆腐ハンバーグ

肉は焼くことで硬くなりがちですが、ひき肉に豆腐を混ぜることでとても柔らかく仕上げることができます。

豆腐は、デザートでも応用が利き、白玉粉と混ぜたら時間が経ってもやわらかく、粘りも抑えられて食べやすいです。

また、ホットケーキミックスに混ぜて焼いても、パサつきが抑えられます。

炊き込みごはん

ごぼうをささがきにして炊き込みご飯の具にしましょう。硬い食材でも、処理の仕方で食べることができます。

やわらかいものばかりになると、食物繊維は摂りにくくなるのでおすすめです。

けんちんうどん

うどんは、高齢者にとって食べやすく、人気のメニューです。

大根、人参、さといも、ごぼう、うすあげ、こんにゃくを薄く切り、具だくさんのうどんで食欲がない時はこれだけでエネルギーも補えます。

また、だし汁でむせやすい場合は、片栗粉でとろみをつけましょう。

栄養バランスを考えたメニュー

高齢者は、運動量が減るため、食欲も低下しがちです。

したがって、栄養を効率よく摂取する必要があります。難しく考えず、主食、主菜、副菜、汁物を揃えることで栄養バランスを取りましょう。

単品料理に比べて、一汁二菜のかたちにすることで、バランスがとりやすくなります。

栄養バランスのとり方

  • 主食...ご飯、パン、麺類、芋類⇒炭水化物
  • 主菜...肉、魚、卵、豆腐⇒タンパク質
  • 副菜...野菜、きのこ類、果物⇒ビタミン、食物繊維
  • その他、乳製品や海藻⇒ミネラル、食物繊維

栄養だけではない重要なポイント

おいしいものを食べたいけど、歯が痛くて食べられない...そんな経験はありませんか。

噛む力が弱くなると、好きな食べ物でなくても、食べられなくなるかもしれません。

私が働き始めた頃に聞いた話で、その利用者に合わせた食事形態を出したとしても食べて頂けない、介護食の難しさを知りました。

とんかつが好きな高齢者のためにとんかつをみじん切りにしたものを再び固めて揚げ直して提供したそうです。

しかし、その高齢者は「これはとんかつじゃない!とんかつは硬いじゃないか!」と言ったそうです。

若い頃に食べていたとんかつの食感が、その高齢者が食べたいとんかつなのです。

おいしさとは、その食材、料理に適した硬さがあるのですね。

どんなにソフト食、ミキサー食、ゼリー食と形を変えても、それは食べたいものではないのかもしれません。

絶対忘れてはいけない運動と休養

やはり、いつまでも食べたいものを食べるには、運動をして筋力を維持することが一番大切なのだと思います。

高齢者だから運動しなくていいわけではないのです。むしろ、無理のない範囲で必要なのかもしれません。

そして、健康維持には休養も大切な要素です。昼夜逆転する高齢者もいらっしゃいますが、これも運動不足が一因かもしれません。

どこか、調子が悪いと思われるなら、栄養・運動・休養のバランスを見直してみてはいかがでしょうか。

食事の時間を楽しくするアイデア

子供への食育が推進されています。これからは、高齢者への食育も重要と言われています。

健康的な食事への関心が高い高齢者は多いようですので、地域の料理教室や栄養講座などで学ぶことも有効でしょう。

まとめ

  • 人は、年齢とともに「食べる機能」は衰える
  • 全身と筋力と噛む・飲み込む力は比例する
  • 身体機能の低下を防ぐことで、いつまでも食べたいものを食べることができる
  • 噛む力が弱った場合は、食材の選び方と調理の工夫で食べやすくすることができる
  • 食育で健康意識を高めることも大切である

若い頃、仕事に子育てに頑張って来られ、これからの人生は食べたいものを食べ、行きたいところへ行って楽しんで頂きたいものです。

自分を過保護にしすぎず、できる範囲で身体機能や口腔機能を鍛えることも必要かもしれません。

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